チョコレートの老舗ブランド「カイエ」創業200周年
現存でスイス最古のチョコレートブランド、カイエが今年2月に創業200周年を迎えた。1819年に設立された工場がスイスで最も古いチョコレート工場だ。後の1898年に建てられたフリブール州のブロ工場では、現在も大量のチョコレートが製造される。工場にはビジターセンターが併設され、有名な観光スポットとしても知られるようになった。
ブロにあるカイエのチョコレート工場では先月10日、「200年分かち合った喜び」と銘打った記念事業のスタートとなる式典が開かれた。
記念式典では、チョコレートの魔法を描いた児童ファンタジー小説「チャーリーとチョコレート工場」にちなんだ市民参加型のフェスティバルが開かれた。同作品の映画に出演したジュリー・ドーン・コールさん、ラスティ・ゴッフさん、ブレア・ダンロップさんの3人がサイン会に出席した。
困難を乗り越え不動の地位を築く
カイエ社は、フランソワ・ルイ・カイエ(1796~1852年)がヴォー州ヴヴェイに創業。創業当初は困難に見舞われ1826年には一旦倒産したものの、カイエは家族経営によって徐々に発展していった。19世紀末、ミルクチョコレートに特化したことで大きく飛躍。この独自のレシピは、カイエの娘ファニーの夫であるダニエル・ペーターが考案した。
1898年、創業者の孫にあたるアレクサンドル・ルイ・カイエがブロに新しいチョコレート工場を設立。この頃からカイエ社は安定した発展を続けた。ブロが選ばれた理由は、大規模なミルクチョコレート生産に欠かせない牧草地と水路という二つの要素を満たしていたためだ。
カイエはチョコレート業界に旋風を巻き起こした。創業の数十年前まで、チョコレートは富裕層が薬局や食料品店で強壮薬として購入する苦くて高価な品、つまり今日でいう栄養機能食品のようなものだったのだ。
すでに1911年からペーター&コーラー社と提携していたカイエは、1929年にネスレグループの一員になった。以来、食料品大手ネスレは今日までカイエブランドとブロの生産拠点を管理している。
観光名所へ
現在も稼働するブロ工場では、300人の従業員がチョコレートの製造に携わっている。この工場はまた、スイスの人気観光スポットの一つでもある。
工場敷地内には2010年以来、チョコレートの世界を体験できるビジターセンターが併設されている。そこで参加できるツアーでは、チョコレートの起源・メキシコをほうふつとさせるアステカ神殿とスペインのガレオン船に始まり、展示室ではカイエ家の歴史、カカオ豆の市場組織やチョコレートバーの生産ラインを見学できる。無料で楽しめるカイエ製品の試食でツアーは終了。さらに興味のある人は「チョコレート工房」でチョコレート作りを体験できる。
このコンセプトは国内外で広く受け入れられ、毎年数十万人がブロ工場を訪れる(2017年は約40万人)。スイスの人気観光スポットのトップ10の一つである「メゾン・カイエ」は、スイス西部に限って言えばシヨン城(ヴォー州)を抜いて1位に輝く観光名所だ。
(独語からの翻訳・シュミット一恵)
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